シュレティンガ―・無職

私は無職なのか、それとも。

5月20日であろう 〜停止する日〜

脳が有給をくれというので、上司たるわたしは承認のハンコを押して脳を有給にした。するとたちまち脳はスリープモードに移行して、脳のシワが無くなっていき、ゆでたまごみたいにツルッツルになった。気絶するほどアンチエイジングである。シナプスの辺りにはご丁寧に脳が手配した交通整理のバイトが雇われ、脳に信号が届く前に「本日は有給だから、迂回してくれませんかねー」と優しく、確固たる意志で諭す。ちなみに給料はパイの実4粒。三半規管も、脳だけずるくない?とご立腹なのですが、三半規管まで有給を取られると寝たきり生活になってしまうので、順番で有給を取らせることを約束する。肝臓は沈黙している。

であるからして、わたしの頭にはゆでたまごしか入っていなかった。司令塔はいなくても、わたしの身体は生きねばならないので、脳有給マニュアルに乗っ取り、最低限の生命維持モードに切り替わる。記憶や感受性の機能は全面的にカットされて、視界は色彩を失う。耳は風の音だけを拾う。お腹が空いたらパイの実を4粒食べて、少しのお茶だけを飲む。スマートフォンのパスワードは脳がいないので解除できない。キッチンとトイレとお風呂以外の道順も忘れた。何にも接続されず、不自由は自由になって、わたしの脳から何かが薄れていく。何かは脳しかわからないけど、もうゆでたまごだし、何でかわからないけどたぶん今日は良い日だ。