シュレティンガ―・無職

私は無職なのか、それとも。

9月11日であろう 〜パンの住処〜

小麦には神さまが宿っている。

お米一粒にも7人の神さまがぎゅうぎゅうにシェアライスしていますが、小麦にもたくさんの神さまが住んでいて、その中でもいちばん権力があり、高待遇なひとり部屋を確保されているのが大麦神の「でるめる様」であります。

でるめる様は、特にパンに対する待遇を向上させるためのパン労働組合を立ち上げておりまして、我が家におかれましても、パンをオーブンで温めた時によりふっくらとさせたいから、パンスチーマーを買ってたもれ〜、とおじゃる丸みたいな語尾で要求してきます。陶器で出来た食パン型のパンスチーマーは、水に浸けてオーブンに入れると蒸気を放ち、パン達のお肌がカサカサにならないようにケアしてくれるのだ。でるめる様は、初めてパンスチーマーが導入された日のことを今でも他の同居麦に自慢げに語っていて、その度にたいこ持ちである下級麦神たちはでるめる様の肌のハリやツヤを大いに褒め称えて、その光景を吟遊詩麦がオーツ麦で出来た立琴で唄い、神話へと昇華させるのだ。

いつもの朝、いつものようにホットケーキを食べていると、でるめる様が4畳半の自室からのそのそと起きてくる。またお気に入りの韓国系パンドルの配信でも見ていたのだろう。フランスパンの抱き枕を抱えたまま、眠けまなこで開口いちばん「のうシュレティンガー無職や、そちも有職になったことじゃし、そろそろパン達にももっとオシャレで大きな部屋を与えておくれ。」と申し上げるのです。でるめる様、わたくしもそう思っていたのです。オシャレなブレッドケースが欲しいのです。もう100均のカゴにパンを入れるのは我慢ならないのです。でるめる様と硬い握手を交わし、わたしはブレッドケースを探す旅に出ました。

加工しすぎてよく分からなくなったブレッドケース。パン達の新しい住処です。快適なのか、キャハー!と、でるめる様の叫び声が聞こえます。朝のパン生活が少し優雅になった気がしました。