シュレティンガ―・無職

私は無職なのか、それとも。

6月13日であろう 〜シンデレラ・ステップ〜

いつもはベッドに入ると5分で入眠出来るのですが、今日は中々寝付けなかった。ひつじを数えるような早さで、自分の寝れない理由を考えてみる。すると、5ひつじ目くらいで人間力が低下していることに気がついた。これは良くない。人間力の低下は生命力の低下であるからして、何か楽しいことをしないと生ける屍になって地球破壊願望に苛まれてしまう。全てを憎んで、たぶんきっとおそらくたぶん、わたしは大変イライラしてしまう。では楽しいこととは何だろうか?考えて、1ひつじ目でコンビニをくわえた羊が脳を横切る。反射的に何故コンビニなのか考えようとしたけれど、無粋な行為と思い止まる。何年わたしはわたしをやってきていると思っているのか。楽しいことは身体が覚えている。考えるまえに楽しもうと決めて時計を見ると深夜12時4分。まだ起きていた家族に声をかけて、誕生日に買ってもらったお気に入りのマウンテンパーカーを羽織り、コンビニに出かけることにした。

こんな深夜にひとりでコンビニに出かけるだなんて、何年ぶりだろうか。歩いて2分ちょっとの距離だけど、すさまじい背徳感でドキドキする。だれも歩いていない住宅街は、とても静謐でファンタジアだった。下水道に流れる水の音も、目を閉じれば深緑の森に流れる川のせせらぎに聞こえるし、動く夜がいると思ったら黒い野良猫だった。遠くの方では、およそ日常生活では聴くことのない破裂音が何かを祝っており、普段歩いているコンビニまでの道が奇妙に曲がりくねって見えてくる。そのうねりは恐怖心のようでもあり、わたしの願望のようでもあった。非日常を求められたコンビニはあたりまえのように煌々と存在を主張して、そのひかりに当てられたわたしはすこしお腹が空いてくる。わたしはこの空腹に安堵と名前をつけた。安堵と空腹には密接な関係があるようなので、いつか根掘り葉掘りしてみたい。コンビニでは分厚くて味が濃そうなポテトチップと、瓶に入ったオシャレなお酒と飲むヨーグルトを買った。なんとなく意地でお酒を買ったけど、今のわたしはたぶんきっとおそらくたぶん飲んではいけない。それでもひとくち、残りは全部あげるとして帰り道に栓を開ける。ぷしゅうと気の抜けた音を聴いたら、なんだか嬉しくて変なステップになった。下水道の川がごうごうと喚いている中、手にはお酒、サコッシュにはポテチ。踊るような帰路で、ひとくちの晩酌。