シュレティンガ―・無職

私は無職なのか、それとも。

7月18日であろう 〜罠師のありかた〜

下の子といっしょに陽気なパンダのYouTubeを見ていると、突然イタチのような素早さでわたしの元から離れてリモコンをカチカチカチカチやりだした。すると、Amazonプライム経由で急にJスポーツとやらが契約完了された。一切の無駄がない、明確な契約作業であった。屈強な男性が自転車のペダルを回す映像が流れて唖然とする。下の子はパンダが映らなくなり、怒りをあらわにすると、リモコンを放り投げてルンバを歩行機代わりに高速移動を始める。ぞうきんがけのようなスタイルで縦横無尽に動く我が子。テレビでは屈強な男性が自転車のペダルを回す映像が流れている。どうやらJスポーツは2,000円の契約料金らしい。天文学的な数字である。パイの実が何個買えるのだろうか、検討もつかない。自分の無力さに打ちひしがれ、よろよろとリモコンであろう黒い棒に手を伸ばす。それはリモコンではなく、生姜にんにくすりおろし器であった。なぜ、こんなところに生姜にんにくすりおろし器があるんだろう。今日は全体的に白昼夢のようだ。よろよろとキッチンに向かい、生姜にんにくすりおろし器を片付けて、ついでに炊飯器でお米を炊いてしまうことにする。炊飯器を開けると、中にLEGOブロックで出来たレタスと、生のすももが入っていた。すももはまだひんやりとしている。一体どうなってしまったのだ我が家は。恐らく犯人であろう下の子に目をやると、ルンバがエラー、エラー、と言いながらものすごいギュルギュルと轟音を上げてぞうきんがけをされていた。ルンバは声なき声を上げており、わたしはルンバの救出を試みる。しかし、ルンバと完全なる同化を遂げた我が子は、物質中の光速よりも速い速度で荷電粒子が運動することが可能であり、このとき発生したチェレンコフ放射によりわたしは追いつくことが出来ない。ほのかに香るイランイランの残滓が夏のエキゾチックと混ざり合い、気絶するほどラグジュアリーな熱を含んだ大いなる何かに絆されたわたしは、そこでお茶。コーヒーよりも渋いカフェインを注入することで使用されていない脳の86.5%が覚醒。ルンバの軌道パターン分析完了。目で追うのではない、必要なのはニョッキであり、つまり罠。わたしはぷりぷりのニョッキを袋ごとフローリングに置く。目標が気がつく。ルンバの動きが止まる。ルンバと分離した我が子はニョッキに吸い寄せられると、ニョッキをやさしく抱き抱えて満足そうにはみはみをした。というわけで今日のご飯はニョッキ。お米は冷凍。海外の自転車レースは知らないチームが優勝した。今日は海の日らしいけど、罠師の日だな。