シュレティンガ―・無職

私は無職なのか、それとも。

6月21日であろう 〜いそがしい焼肉〜

近所にある焼き肉屋さんはとても美味しくてリーズナブルでもあり、さらにはからくり屋敷でもあった。

以前、この店に子どもを連れてきた時、誤って掘り炬燵の下にコップを落とした時があった。幸い、中身は何も入っていなかったのですが、落とした瞬間に何故か掘り炬燵の側面がカバの口みたいにパッカリと空いて、コップを飲み込んでしまった。その後、何事もなかったかのようにカバの口は閉じられてしまい、店員さんにそのことを伝えると、ウフフと笑って代わりのコップを出してくれた。きっとこの焼き肉屋さんでは、そういったからくりが横行していて、慣れっこなのだろう。子どもは忍者の家みたいだと喜んでいて、わたしも盆と正月がいっぺんに来るとはこうことなのか、と感心した覚えがある。焼き肉とからくりをいっぺんに楽しめるお店はそうないよ。消えたコップはピタゴラスイッチみたいにお店の厨房に届いているに違いない。

そんなからくり焼き肉屋さんで、ちょっとしたお祝いごとをした。お祝いに相応しい、ちょっと良いお肉を焼く。下の子が七輪を触りそうになるので、触れたら一機失うことを伝える。けれどもやっぱり触れたいみたいで、お肉を焼きながら我が子を抱えてロデオをする。したたる肉汁が七輪の火を扇動し、ロデオはなおも加速していく。見かねた店員さんがウフフと笑って、小さなコップに氷を入れて持ってきてくれて、我が子は氷に釘つけになる。からからと鳴るコップを大事そうに手で持つと、そこから伝わるほんの少しの冷たさがロデオを鼻白ませたのか、水牛みたいにおとなしくなった。ようやくお肉にありつけると思ったけれど、焼けたお肉は上の子が随時食べるからくりになっていて、網の上にはもうニンジンしか残っていなかった。追加でちょっと良いお肉を注文し、ニンジンを焼き肉のタレにつけて食べて、ストローで烏龍茶を飲む。すると上の子が、ストローで飲むのは子どもだけなんだよ、と教えてくれた。なんともかわいい世界観である。わたしはたいそう子どもなので、ストローで息を吐き出して烏龍茶をぶくぶくさせる。子どもたちは笑っていた。気がついたら下の子に持たせていたコップが消えていて、どこを探しても見当たらない。店員さんに謝ると、大丈夫ですよと笑っていた。やっぱりからくり屋敷の謎は深まるばかりだった。

 

それはそうと、お誕生日おめでとう。次こそはニンジンも食べておくれね。